恩送り
問い合わせの一本の電話。
「しゃくなげの森ではアブラメ(渓流の淡水魚)の販売されてませんか?」
これまで、飼育や展示用、鑑賞用、研究用でヤマメの問い合わせはありましたが、アブラメ(正式名称タカハヤ)の問い合わせは初めてです。
弊社ではヤマメしか扱ってないことと、差し支えなければ何にお使いですか?と尋ねたら、お父様が末期の癌で、アブラメを火ぼかして田楽味噌で練った味噌が食べたいとの事でした
その思いを叶えてあげたくて、これまでお兄さんが渓流に釣りに行ったりしたけれど釣れなかったとの事。それでネット検索していたら、しゃくなげの森の夏のイベント「魚とり教室」でアブラメがとれることを知り、連絡したとの事でした
これは、天からの試され事だと勝手に解釈し返答しました。
「川でどうにかして獲ってくるので、しゃくなげの森までおこしください」
場所は宮崎市佐土原からでしたので3時間後に時間を設定。
昨年の台風の影響で、上流の山の崩壊があり土砂の流入が多く、川の様子が一変しているので獲れるかどうか心配しながらトラップを設置。
目標は20尾でしたが、13尾獲れホッと一安心しました。
時間通りに取りにこられました。渓流を案内して動画や写真を撮って、自然豊かなこんな場所で獲れたとお伝えくださいと、アブラメをお渡ししました。
お代は?と言われたので、これから困った人がおられたら恩送りで助けてあげてくださいとお伝えしたら、菓子折りを差し出されましたので、そちらは有り難く頂戴致しました。
わたくしも父を癌で失った経験があります。最期の時期にあの店のうどんが食べたいというのを聞いて、その店まで行って病室にうどんを運んだのが良い思い出になっています。
できる限りのことをしてあげたいと言う気持ちが痛いほど分かるので、今回は恩送りをさせていただきました。